2025年4月に、2017年8月から続いた「黒潮大蛇行」が終息したと気象庁が発表しました。大蛇行の発生原因や始まった時期、そしてそれが沿岸海域や漁業(とくに秋刀魚・秋鮭)に与えた影響を整理します。最新のインターネット調査で得られた公的機関や報道の情報に基づき、消費者が今年の“秋の味覚”をどう見ればよいかを示します。
黒潮大蛇行とは/いつから始まっていたのか

黒潮は日本列島の南岸を東に流れる暖流で、通常は本州南岸に沿う流路(非蛇行流路)をとります。しかし、黒潮が南へ大きく湾曲して沖合へ離れる現象を「黒潮大蛇行」と呼びます。今回発生していた大蛇行は2017年8月に始まり、2025年4月に終息したと気象庁は公表しています。継続期間は7年9か月に及び、観測史上最長クラスの長期間の事象でした。
なぜ大蛇行は起きるのか(原因とメカニズム)
大蛇行の直接的な単一原因はまだ完全には解明されていませんが、観測と数値シミュレーションで明らかになってきた点がいくつかあります。主な要素は以下の通りです。
- 外部渦(大きな海洋渦)の衝突:九州南東沖などで発生・移動する直径数百キロの反時計回り渦が黒潮に衝突し、黒潮の向きを大きく変える「小蛇行」を生み、それが発達して大蛇行へ移行することが観測的に示されています。
- 上流域からの流況変化:黒潮の上流域の水温や流速分布の変動が下流の流路に影響を及ぼし、蛇行が強化される場合があります。
- 気候の長期変動との関連:地球温暖化や大規模な気候変動(大気の循環変化)が海洋の熱や渦の発生条件に影響し、蛇行の発生確率や持続性に寄与する可能性が議論されています。完全な因果関係は研究途上ですが、複数の要因が重なって発現すると考えられます。
これら複合的な要因により、一度発生した大蛇行は数年にわたって安定化することがあり、2017年以降の継続もそうしたダイナミクスの産物と理解されています。
大蛇行の海洋・気候への影響(沿岸水温・生物基盤)
大蛇行が続くと、黒潮本流が沖合へ離れるため沿岸域の水温低下やプランクトン・小魚の分布変化が起きます。これにより回遊魚のルートや寄り付き状況が変わり、従来の漁場に魚が入らない「不漁」を招くことが度々観測されてきました。さらに、黒潮続流の位置変動は局所的な海洋熱波や沿岸気象(夏季の高温など)にも作用するため、漁業だけでなく海洋生態系や気候事象にも広く影響します。
秋刀魚(サンマ)― 終息がもたらす「沿岸回遊の改善」とサイズ向上の傾向

黒潮大蛇行の影響で近年、サンマが日本沿岸へ寄り付きにくくなり「不漁」が続いたとの指摘がありました。しかし大蛇行の終息は黒潮流路が従来の位置へ戻る過程を意味し、サンマを含む回遊性の魚が沿岸付近へ来やすくなる海況変化をもたらします。実際に2025年の夏・秋にかけて各地の漁港で報告された水揚げでは、個体サイズが大きく脂の乗りが良いとの声が多く、初期の市場動向でも例年より良型が目立つとのニュースが出ています。とはいえ総漁獲量(来遊量)が飛躍的に増えるかは別問題で、資源量は年ごとに変動するため数とサイズは必ずしも同じ動きをしない点は注視が必要です。
秋鮭(秋サケ)― 良型の報と全道来遊数の地域差

秋サケについては、港や市場で「良型が入り高値が付いた」など局所的に好調の報がある一方で、道総研の来遊予測は2025年の全道来遊数を約1,141万尾(前年比で減)と予測しており、地域差の大きさが鮮明です。つまり一部の沿岸では豊漁や良型が見られるが、北海道全体の資源量は低下見込みであり、流通や価格は地域・時期によって大きく変動すると見るべきです。
北海道の他の水産物(ホタテ・毛ガニ等)の動向

- ホタテ:道内全体の水揚げ見通しは減少を示す報道があり、25年度は前年実績を下回る見込みで、供給減による価格上昇圧力が懸念されています。漁協・生産者の対応や輸出動向が鍵となります。
- 毛ガニ:沿岸で抜け殻の大量漂着が確認され、小型個体の多さを指摘する調査報告があり、「来期以降の豊漁の兆し」との見方もあります。地域によっては既に豊漁報が出ている漁場もあります。
消費者向けの見方 — 買いどき・楽しみ方の具体アドバイス
- サンマは“質の良い個体”が出回る可能性大:大ぶりで脂ののったサンマが手に入りやすい年の見込み。早めの鮮魚店チェックや地元直送品を狙うと良いでしょう。
- 秋サケは産地情報を確認:全道ベースの来遊数は低め予測でも、特定産地では良型が入るため、産地別入荷情報を確認して購入を。
- ホタテや毛ガニは価格変動に注意:ホタテは供給減の可能性、毛ガニは地域差が大きく、セールや物産展情報を活用すると掘り出し物に出会えることがあります。
最後に(まとめ)
黒潮大蛇行は2017年8月に始まり、2025年4月に終息したという事実は、海況や漁業に直結する重要な出来事です。原因は単一ではなく、海洋渦の衝突や上流域の流況変化、気候変動の影響などが複合して作用します。
終息は沿岸回遊の改善につながり、特にサンマでは「大ぶりで脂ののった個体」が目立つなどポジティブな変化が報告されています。ただし資源量や水揚げは種目・地域ごとに異なるため、消費者は“産地情報”“市場情報”を参考に賢く選ぶと良いでしょう。この記事は最新のインターネット調査をもとに作成しています。
出典・参考(主要)
- 気象庁「黒潮大蛇行の終息について(2025年)」。(気象庁)
- 国土交通省海岸局「黒潮大蛇行の終息について」。(海上保安庁)
- 東京大学等の海洋研究解説(黒潮蛇行メカニズム)。(アトモス)
- 報道:テレビ朝日「サンマ豊漁に? 黒潮大蛇行の終息」等(2025年)。(テレ朝NEWS)
- 北海道立総合研究機構「令和7年の秋サケの資源状況(来遊予測)」。(hro.or.jp)
- 北海道新聞・道漁連などのホタテ・毛ガニに関する報道。(北海道新聞デジタル, UHB:北海道文化放送)
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